【神神の契約】釈 

西風隆介による公式の謎本  

まな美と土門くんが喋る 『神神の契約』 ver.2

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「ほな姫、『神神の契約』ばーじょん2を、どぞ」
 仕切り直して、土門くんがいった。
「本編の『神神の契約』には確固たる証拠があったでしょう。神社の名称などに。こちらの契約にも証拠は揃っていて、それも複数あって、古墳、神社、そして古い文献などにもね」
「その古い文献いうんはなんや? 『古事記』かあ?」
「図星よ。前玉神社の祭神の前玉比売(さきたまひめ)って、堂々『古事記』に登場してきていて、結婚するのね。そのお相手は誰あろう……」
 まな美は、最大限ほのめかしていってから、
「この件はあとで説明するとして、まずは古墳の話からね」
「そ、そんな蛇の生殺しみたいなあ!……」
 土門くんは炬燵の中でじたばた暴れているが、
「一般的にいって」
 と、まな美はおかまいなしに喋る。
「ある地方の国が〝前方後円墳〟を造り始めたとしたら、それが意味するところは何かしら? 土門くん?」
「倭に恭順の意を示したわけや、軍門に下ったことを意味する」
「そうよね。けれど、これは前方後円墳だけに限った話ではないわよね。別の古墳形式にだって、同じことが言えそうだと思わない?」
「あ!……なあるほど」
 土門くんは早見えしてうなずくと、その別の古墳形式をパソコン画面に表示させた。

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「これや!……この上円下方噴は、忌部が突如として造り出した真新しい形式の古墳で、年代は……もう面倒臭いから断定的にいうけど、650年や。そして660年に同じ古墳をもう1個つくって、たしか天文台構内古墳で、それを大國魂神社の右と左に配置した。とはいうても、大國魂神社はまだあらへんかったんで、北の女神様や。そうこうしとったら、680年頃、何十キロも離れた入間川沿いに、同じ形式の上円下方噴がで~んと造られたわけや。それが山王塚古墳やねんけど、このへん一帯は氷川神社群で元来出雲族の土地やんか。ということはつまり、出雲族が忌部の軍門に下ったことを意味する。姫の言いたいことはこういうことやな」
 まな美は、うなずいている。
「なんかげーむあったやんか。北武蔵と南武蔵にはさまれとって、埴輪を買え~埴輪を買え~と何かにつけて干渉されて、もう根負けしてしてしもて裏にひっくり返って同じ色になんねん」
「それはオセロね」
 まな美は涼しい声でいうと、写真を指さしながら、
「この上円下方噴の形、この形にこそ意味があったのよ」
「形……?」 

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                         さらにつづく