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「この案内板を、しばらくじーと眺めとったら答が浮かんできたぞう。そやけど、こんな単純な答でええんやろか?」
「おそらく、それで合っていると思うわ」
「そやったら答合わせをする前に、買え~買え~と忌部が押し売りしとった生出塚(おいねづか)埴輪の写真を、一挙に、でで~んと」
「何をいまさら、みんなで一緒に観にいったじゃない、鴻巣市の文化センターまで」
「姫の話を聞いとったら、ちょっとひらめいた事があんねん・・・・・」
「・・・・・鉄分の多い土を使ことったらから赤茶けた色になる、いうんが生出塚埴輪窯の特徴やそうや。そやけどこの写真を見ると、色にばらつきがあるやんか。とくに濃いい色のやつは、備前焼の田圃の底土なんかに雰囲気が近い」
土門くん家(ち)は骨董店を営んでいるので、その種の事には造詣が深い。
「これはわざとに、使い分けしとったんちゃうやろかと自分はひらめいたわけや」
「使い分け……?」
「人種がちごとうやんか。三嶋大明神一族は南東語族人で肌の色が濃い。それを表すためにや。この写真の右端なんか、いかにもそんな感じがするぞう」
「土門くん、それは凄い斬新な発想よね、ちょっと見直したわ」
「実は……実はさらにひらめいたんやけど、これは話すと炎上しそうや」
土門くんは、声をひそめぎみにしていう。
「それは聞き捨てならないわね」
「三嶋一族を作ったとすると、出雲族のも作ったんとちゃうやろか。買え~買え~と一方的に押し売りすんのは商売人としては失格や。お客さんにも媚を売っとかへんとな。たとえばこの写真や。ここには、倭人(やまとびと)、三嶋一族、そして出雲族が表されとうと思うんやけど、どないやろか?」
「ど、土門くん! その種の話は御法度なのよ!……」
と、まな美は台バンする。
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