【神神の契約】釈 

西風隆介による公式の謎本  

下野国(栃木県)にもあった〝鷲宮神社〟

 先の神社分布図には描かれていないが(なぜプロットされてないのか半分謎だが)、実は、利根川を越えた北側にも〝鷲宮神社〟は分布しているのである。宗教法人登録された22社の内約6割が北武蔵(埼玉県)にあったが、残りの大半は、つまり下野国(栃木県)に分布しているのである。

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 では、その下野国にある鷲宮神社を見てみよう(以下は「kyonsight 栃木県の神社」を参考にいたしました)。

 ①下野国鷲宮神社栃木市都賀町家中)祭神は天日鷲(あめのひわし)琴平神社境内社としてある。
 ②鷲宮神社栃木市箱森町)祭神は天日鷲
 ③鷲宮神社下野市橋本)祭神は天日鷲命大化改新以前の創建と伝わる下野古社19社の一つだそうで、また琴平神社境内社としてある。
 ④鷲宮神社下野市東根)祭神は天日鷲命武夷鳥命。建久三年(1192年)創建。
 ⑤鷲宮神社 (真岡市鷲巣)祭神は武夷鳥命享保年間(1716~1736年)の建立で上総国(千葉県)飯野より鷲宮を勧請。
 ⑥鷲宮神社 (真岡市石島)祭神は天日鷲命
 ⑦鷲宮神社佐野市犬伏上町)祭神は天日鷲命
 ⑧鷲宮神社さくら市鷲宿)祭神は武夷鳥命伊弉諾尊伊弉冊尊

  離れた場所にある⑧と近代創建の⑤を除いては、祭神は〝天日鷲命〟で、これは言うまでもなく忌部五部神のひとり阿波忌部の祖神である。この地域で最古の鷲宮神社は③で、次に①が古いようだ。そしてともに忌部系神社には付きものの琴平神社があって、また小山安房神社(祭神は忌部祖神の天太玉命)も境内社琴平神社を有する。
 神社名に「鷲」が含まれれば、原則〝天日鷲命〟が祭神のはずなのだ。以前に大鷲神社についてご説明したが、大鳥信仰の伝承は「白鳥」であって「鷲」は関係しないし、同様に出雲族の神話にも「鷲」など登場してこないからだ。

 ここ下野国は、宮目神社⇔小山安房神社、再々説明してきた忌部の領土宣言をしめす北・南の神殿だが、これら中核神社が残っていて、つまり忌部の入植地であると明瞭に分かるので、周辺の衛星神社も、ぶれることなく鷲すなわち天日鷲命と祭神が定まったわけなのだろう。
 だが北武蔵はちがう。一見、ここが忌部の入植地だとは分からないのである。その最たる要因は、領土宣言の南の神殿を、あろうことか70キロも離れた彼の地(南武蔵)に建てているからだ。さきたま古墳群「北斗」に対して「南斗」も50キロ離れている。そんなの年代を経ると誰にも分からなくなってしまうのは必定だ!
 だから神社の祭神がぶれてしまい(不詳になってしまい)、玉敷神社や久伊豆神社の祭神は大己貴命に置き換えられ、鷲宮神社出雲族創建だと歴史が書き換えられてしまったわけだろう。
 これらは、いわば環境要因だが、実は積極要因ともいうべき、つまり歴史改竄を意図的にやられた痕跡が、その当事者が存在したようなのだ。
 いわゆる〝陰謀論〟だが、この種の話題は歴史部のふたりが詳しいので、ふたたび彼らの話に耳を傾けてみることにしよう。

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