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「お兄さんちからパクってきた写真の中に《×印》のフォルダーがあって、中に入っていたのがこれね」
「なんやあ? 須我神社ぁ?」
いかにもいかがわしそうに土門くんはいう。
「須佐之男命が八岐大蛇を退治した後、櫛名田比売と結婚したでしょう。そのさい〝須賀〟に宮を建てたと『古事記』にあるのね。その須賀だというわけよ」
「そやけど×印がついとったんやから、違うんやろ?」
まな美は、小悪魔顔でうなずいている。
「それで日本初之宮かあ、それに和歌発祥の遺跡とあるやんか。八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を~」
土門くんは、その有名な和歌を滔々と詠んでから聞く。
「そやけど、これはどないな意味なんや?」
「そういうのはね、もう感じるがままに感じればいいのよ」
まな美は投げ槍にいってから、
「この地方には須義禰命(すがねのみこと)という氏神さまがおられて、それが本来の祭神だったらしいわ。そもそも『出雲国風土記』には、八岐大蛇の伝承そのものが書かれていなかったし。それにもちろん、この須我神社は式内社でもないし……」
「それは結局やな、この神社はバッタもんやったいうわけや」
「そうそう、そのバッタもんだけれど、それはどういう意味なのかしら?」
まな美は知っているが、白々しく聞く。
「葉っぱの上におるバッタやんか。見つけるとすぐに飛んで逃げてしまう。人にじーっと見られると正体がばれよるねん。そやから、ぴょんぴょんと飛んで逃げるわけや。そやからバッタもんいうねん」
「そうそう、それそれ!……」
全然辻褄が合ってない説明だが、まな美は手を叩いて嬉しがるのだった。
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