【神神の契約】釈 

西風隆介による公式の謎本  

NHKダークサイドミステリー「〝ヒトラーの予言者〟謎の霊能力者ハヌッセンの野望」とユリ・ゲラー

 数日前のことだが、正確には2021年7月15日(木曜日)放送のテレビ番組を観ていて、「あれ、これどこかで見た(読んだ)ぞ」と軽いデジャブに襲われた。
 心当たりを探してみると、ムーの今年の4月号に、こんなタイトルがあった。

 

 ヒトラーを操った知られざるナチスの超能力者エリック・ヤン・ハヌッセン 文=山口直樹

 

 これがつまりデジャブの正体だ。
 だがテレビ番組の中身は薄っぺらく、Wikipediaにもエリック・ヤン・ハヌッセンの解説があるのだが、それに毛の生えた程度であった。ムーの記事の方が数十倍濃密である。そして2ちゃんねる風に揶揄するとこうなる。

 

【急募】番組制作者【NHK
 Wikipediaを動画にするだけの簡単なお仕事です。

 

 さて、ここからが本題だが、さらに驚くべき事に、番組の冒頭、いきなりユリ・ゲラー(74歳)が登場してきて「新型コロナに苦しむ世界に向け、新たなパフォーマンス」とやらで、ワクチン注射をされながらスプーン曲げを演じて見せるではないか!

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 厳密にはスプーン曲げではなくスプーン切断だが、ネタの詳細はいまさら説明するまでもないだろう。「超能力のスーパースター今も健在。そして90年前――」とナレーションが入って、やおら本編が始まるのである。

 エリック・ヤン・ハヌッセンは奇術師(透視術や交霊会などを演じるインチキ霊能力者)として冨と名声を得て、ナチスにせっせと媚を売るが、あっさり殺されてしまうのだ。何を隠そう、彼はユダヤ人だったのである。

 ユリ・ゲラーは、正真正銘、テルアビル(イスラエル)生まれのユダヤ人である。

 ユダヤ人のエセ超能力者つながり、といった理屈で番組の冒頭に抜擢されたのだろうか。
 ナチスに殺されたユダヤ人のエセ超能力者を扱った番組にユリ・ゲラーの映像が使われていることを、ユリ・ゲラー本人はご存じなのだろうか? いずれにせよ、これは冷静に考えると目茶苦茶な番組構成で、ナチスに惨殺されるユダヤ人、エセ超能力者、二重三重にユリ・ゲラーの名誉を毀損していることになる。

 とくに「ナチスに惨殺されたユダヤ人」のエピソードに現在活動している特定のユダヤ人(ユリ・ゲラー)をなぞらえるというのは、放送倫理に明らかに抵触するだろう。国際紛争すら起こりえ、NHKの能天気ぶりには呆れるばかりだ。

 このユリ・ゲラーのパフォーマンスそのものは今年の正月にTBSニュース日テレNEWS24などで放映されたそれで、それをNHKがパクってきて番組の冒頭にくっつけているのだ(もちろん出演料等は支払われているはずだが)。

 なお、このとち狂った番組は7月20日(火)午後11:45に再放送されるそうで、とくとご覧あれ。