【神神の契約】釈 

西風隆介による公式の謎本  

まな美と土門くんが喋る〝仇敵藤原氏の空白域〟

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「こうやって倭国武蔵国の年譜をならべてみると、あれこれと見えてくるわよね」
「ほんまかあ?……武蔵の方はすこすこで古墳しかあらへんやんか」
「その合間を真の歴史で埋めるのが、わしたち歴史部のつとめじゃない!」
 と、まな美は檄を飛ばしてから、
「重要なのは、中臣鎌足が669年に亡くなっていたこと。後継者は藤原不比等(ふひと)なんだけれど、当時はまだ子供で、その不比等が台頭してきたのは700年頃からなのね。それに他の中臣たちは、壬申の乱で負けた大友皇子、すなわち弘文天皇に味方していたので、処刑もしくは流罪なのよ。つまりこの間は仇敵藤原氏空白域で、忌部を邪魔するような勢力は存在しなかったのね」
「な~るほど、それで天皇さんに北斗信仰を布教できたわけやなあ」
「山王塚古墳って、異様に大きいでしょう。熊野神社古墳や天文台構内古墳の約4倍のスケールよね。これはわたしが想像するに、忌部の勝利宣言ね」
壬申の乱で勝ったからか?」
「それもあるけれど、天武天皇が忌部の信仰を受け入れてくれたから、そのうえ藤原が消えたからあ」
 と、まな美は無邪気にいってから、
「それに、この山王塚古墳の場所は入間川沿いで、出雲族の領域だけれど、北武蔵・南武蔵の双方から忌部が手伝いを派遣していたはずよ」
「それは言えそうやな。出雲族だけの財力では、そないに立派な古墳は造れそうにあらへん」
「それに土門くんいわく、上宮王家滅亡事件以降は殺戮だらけで、倭は暗黒面へと落ちていったでしょう。ちょうどそんな時期に熊野神社古墳は造られ、つまり忌部と出雲族が盟約をむすんだわけね。それって、わたしが思うに、過去のある時期ととってもよく似ているのよ」
「ええ? どんな時期とやあ?」
天皇、誤りて人を殺したまふこと衆(おお)し、天下、誹謗して言う。大悪天皇なりと『日本書紀』に堂々と書かれてしまっていた雄略天皇と、星川皇子のころの話が・・・・・」 

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                         さらにつづく