【神神の契約】釈 

西風隆介による公式の謎本  

神社で柏手(かしわで)を打つな!

 小説『神の系譜』シリーズ中では、数え切れないほどの神社を訪れているが、登場人物の誰一人として「二礼二拍手一礼」などの作法はやったことがないのだ。
 天目マサトは自身が神なので他所の神様を拝むこと自体おかしいし、まな美は「二礼二拍手一礼」は伊勢神道系で明治以降に強要されたものだと知っているのでやらないし、土門くんは何かにつけて迎合する性格だから他の二人にあわせてやらないし、火鳥竜介は敬虔なる無神論者だからやるはずがないのであった。
 そして最近、こんな本を見つけたのだ。

  f:id:NARAI:20210724202457j:plain

『神社で柏手を打つな!』日本のしきたりのウソ・ホント 島田裕巳著 2019年

 この本をぺらぺら~と読みすすめて真っ先に思ったことは、まあ何と文章が上手でクセがなく読みやすいことか(わたしのそれとは真反対でえらい違いだ)。Wikipediaで氏の項目を見てみると、2011年から2020年の十年間で約90冊もの本を書かれていて、文章は書けば書くほど上手くなるという法則があるにはあるが、驚愕の冊数だ。

 内容は、表題以外にも、「神社の参道は、中央は神の通るところなので、参拝者ははしっこを歩け」という怪しげなしきたりが、さももっともらしく吹聴されていると警笛を鳴らされている。こちらも至極当然で、こんなことを言い出したのは、どこのどいつだ! そもそも参道は人が参拝するさいに歩く道で、神様がのしのしと歩いてくるわけではないのだ。ぴゅーと空を飛んでくるのに決まってるじゃないか。降臨って言葉があるように。

 ところで、わたしは島田裕巳さんとは過去(大昔)に一度、対談させていただいたことがあるのだ。何の雑誌だったか思い出せない(書棚の奥に埋もれていて探し出せない)が、もちろんオウム事件以前の話である。
 当時、島田さんは大学の高名な助教授で、わたしは単なる超能力おたくだ。ブッキングした編集者の勇気は買うが、わたしとしては冷や汗もので、話もまったく弾まなかったことを覚えている。
 あれから約三十年たった。島田さんの専門である宗教学に関しては、わたしも少しばかりは知識が増えたことだろう。今、再度対談をさせていただければ、有意義な話が語りあえるのではないかと思うのだった。……